教員の視点
毎年起こる自然災害に
法政策の面から
どう対応すべきか
ANSWER!
答えてくれる人
地域創生学科 教授 津軽石 昭彦
担当科目は防災・復興論、震災に学ぶ、防災・復興演習、
地域創生概論、地域環境政策論、ゼミナール。1982年に岩手県に入庁し、法務、人事、行政改革、
環境、議会などの担当を経験。趣味は、知らない街を徘徊すること。
多くの人の生命や財産を
平等に守るため自然災害に
対する法律や制度が必要。
多くの人の生命や財産を平等に守るため
自然災害に対する法律や制度が必要。
現代の日本では、毎年のように地震や台風、豪雨、土砂災害などの大規模な自然災害が発生し、甚大な被害をもたらしています。国民の生命や財産を守るため、国は災害対策基本法や災害救助法を制定、地方自治体は地域防災計画を定め、自然災害に備えています。仮に災害が発生した時の対応が効果的に行われ、復旧復興にある程度の期間が必要になったとしても、地域の実情や被災状況に合わせて望ましい方法で被災地域の復旧復興が進められるよう、法律や計画が必要になるのです。
「個々の地域」に目を向けると
見えてくる災害が発生した
場合の影響や必要な制度。
「個々の地域」に目を向けると見えてくる
災害が発生した場合の影響や必要な制度。
大規模災害時には、その地域がもともと持つ課題が一気に表面化することがあります。東日本大震災では、もともと高齢化と過疎の課題を抱えている東北地方の沿岸部が被災したため、これまで以上のスピードで人口減少が進んでいます。特に原発事故の影響を受けて住民のほとんどが他の地域への避難を余儀なくされた、福島県沿岸の町では居住している住民が震災前の人口の1割も戻っていないというところもみられます。また、被災地で再生可能エネルギー事業を進めようとしても、通常、農地は農業以外の用途ではすぐには使えないため、事業を迅速に開始できないという制度上の課題が見えてきたのです。災害が発生する前から地域の特性や課題を理解することで、いざ災害が発生した際に地域や住民にどのような影響が及ぶか、どのような制度があると防災や復興につながるか、現実的に考えられるでしょう。
防災・復興のプロセスを学ぶことは
法律や地域創生のほか、
あらゆる分野を学ぶことに通じる。
防災・復興のプロセスを学ぶことは
法律や地域創生のほか、
あらゆる分野を学ぶことに通じる。
東日本大震災をはじめとする大規模災害の被災地での復興の過程を見ていくと、街や地域をゼロから作り上げていくプロセスと同じということがわかります。そのため防災と復興を学ぶことは、防災に関する制度だけでなく、被災地の復興のための、土地開発や地域振興、住民の生活支援、産業復興など、法学部で学ぶさまざまな法律・政策形成の知識を身に付けることにつながります。さらに、災害発生の大まかなメカニズムを理解するには地学や土木の初歩的な知識を学ぶことになりますし、街の復興には経済学的な側面もあります。このように防災や復興に関わる法制度を学ぶことが、新しい興味のある分野や進みたいと思う将来に気付くきっかけになるといえるでしょう。
結論
自然災害を“自分ごと”と
捉えることで必要な法律や
制度をイメージしやすくなる。
自然災害を“自分ごと”と捉えることで
必要な法律や制度をイメージしやすくなる。
津軽石 昭彦防災や復興について学ぶことを通じて地域を見る目を養うとともに、災害を自分ごとと捉えてみましょう。自分が住んでいる地域で災害が起きたときの影響や、万が一被災した場合に復興させていくステップを想像することが、地域や住民を知ることにつながっていきます。そこから、普段は気づかない地域の課題を見出し、その解決のためにどのような法制度や政策が必要かを考えるなかで、法学教育が目指すリーガルマインド(法的思考)を育んでいってほしいと思います。