教員の視点

全国的な「ごみ屋敷問題」

解決のヒントはどこ?

ANSWER!

答えてくれる人

地域創生学科 教授 出石 稔

担当科目は地方自治法、地域政策論、ゼミナール等。
大学卒業後、横須賀市役所に入庁し、行政手続条例・情報公開条例の制定や
地方分権・政策法務の推進などに取り組んできた。趣味はゴルフ、テニス。

教員の視点

全国的な「ごみ屋敷問題」

解決のヒントはどこ?

ANSWER!

答えてくれる人

地域創生学科 教授 出石 稔

担当科目は地方自治法、地域政策論、ゼミナール等。
大学卒業後、横須賀市役所に入庁し、行政手続条例・情報公開条例の制定や
地方分権・政策法務の推進などに取り組んできた。趣味はゴルフ、テニス。

ココを理解

憲法では、「ごみであっても他者の
家の物を勝手に処分してはいけない」
ので、問題解決は難しい。

憲法では、「ごみであっても
他者の家の物を勝手に処分してはいけない」
ので、問題解決は難しい。

ごみであふれた住宅=ごみ屋敷は、社会的な問題になっています。ニオイや害虫、防災・防犯上の危険、景観の悪化など、近隣の住環境や生活環境に悪影響を及ぼす可能性が高いからです。ただし、ごみ屋敷の居住者本人がごみと認識していない場合、我が国の憲法では他者が勝手に処分してはいけないことになっていて、法律でも対応できないので、地方自治体は独自の条例を制定し、ごみ屋敷問題の解決に動いています。

ココが着眼点

地方自治体は独自のルール
「条例」を制定することで
地域の問題の解決に臨んでいる。

地方自治体は独自のルール「条例」を
制定することで地域の問題の解決に臨んでいる。

条例には法律と同等の強制力があり、罰則を付けることもできます。ごみ屋敷問題に対する条例は、行政や関係団体がごみ処理を代行したり見守りを行ったりする「支援」と、勧告・命令・代執行などを行う「措置」の2つが基本となり、この条例によって8~9割の問題は解決しています。残りの1割程度に関しては、支援や措置を行っても、再びごみを溜めてしまうという問題が見えてきています。条例は、運用して結果が出ない部分があれば改正していくもの。例えば、横須賀市はごみ屋敷問題の条例を改正するなどして、「措置」を強化したり、ごみステーションからの持ち出しを禁止するなどの対応をしています。

生活に根付く「行政法」が
何のためにあるか?この理由が
条例を発案するヒントになる。

生活に根付く「行政法」が何のためにあるか?
この理由が条例を発案するヒントになる。

行政法の知識があると、条例について考えやすくなります。行政法とは一つの法律ではありません。学校教育も医療も福祉も税金も、家を建てることもルールが定められています。これら一つ一つのルールが行政法といわれるもので、生活に密着した法律です。なぜ行政法というルールを定めるかというと、多くの人の人権を守るため。ごみ屋敷問題で考えると、ごみを溜めること自体は個人の自由ですが、溜まったごみが原因で近隣の人の生活が侵害されます。多くの人の人権を守るため、特定の人の人権を抑えるのが行政法の役割です。そして、条例もその多くが行政法です。この考え方を理解すると、どのような条例が必要か検討しやすくなるでしょう。

ココで法思考

条例=多くの人の幸せを
サポートするツール
ということを覚えていてほしい。

条例=多くの人の幸せをサポートするツール
ということを覚えていてほしい。

問題解決のための条例を考えることで、課題は地域にあることを実感してほしいと思います。そして、社会や地域のみんなが幸せになる方法も考えてみましょう。自分も他者も幸せにするにはどうすればいいか、という視点を持ってほしいです。法律や条例は厳しいルールと受け取られがちですが、多くの人の幸せをサポートするものであることも覚えていてください。