教員紹介

法学部教員コラム vol.19

2019.10.24 地域創生学科 志村 武

…追々伸「正義の女神ユスティティアへのラブレター」

法学部では、法学部教員の研究生活の一端や、大学人として
折にふれて感じたことを、コラムとして順次紹介しています!

 

 

2019-10-24 掲載
vol.19   『…追々伸「正義の女神ユスティティアへのラブレター」』
               関東学院大学ロースクール閉院によせて
執筆者:法学部 教授 志村 武

 

 

正義の女神像

 

正義の女神像

 

 
前略 正義の女神ユスティティアさま
 
 あなたには今までに2回ラブレターを書かせていただきました(関東学院大学法学部教員コラムvol.16 2016.05.26)が、本当に残念ながら一度もお返事をいただけませんでした。それにもかかわらず今回3回目のお手紙を書かせていただくことをお許しください。僕の近況報告です。
 「もしもし、志村さん。志村さん。今度あなたの故郷、横浜の関東学院大学がロースクールを創るので、よかったらこちらに移ってきませんか?」
 忘れもしない・・・あの日、あなたを思って静大宿舎のベランダに出て日本平から駿河湾にかけて輝く夜空の星を眺めていた時に、静岡大学の元先輩教授で関東学院大学の税法教授の湖東先生からいただいた1本の電話が僕とあなたの新たな関係の始まりでした・・・そう、僕はあなたにただ恋するだけでなく、あなたへの片思いの傷心を癒すために心機一転、静岡大学人文学部法学科から新天地の故郷横浜の関東学院大学ロースクール(法科大学院)に移って、今度は長年の叶わぬ恋の相手であるあなた、正義の女神ユスティティアたらんとする法曹、いわばリトル・ユスティティアの養成に専門職大学院で取り組むことにしたのです。しかし、ここ横浜でも僕のあなたに対する思いは一日たりとも薄れることはありませんでした。いや、日夜リトル・ユスティティアになろうと真剣に努力する学生に接し、むしろあなたに対する思いは日々ますます募っていったのでした。
 
 あれから早14年・・・日本における大きな法曹養成政策の転換の中で、関東学院大学ロースクールは惜しまれつつもその歴史に幕を下ろすことになりました。僕はといえば、それでも法を学ぶ限りあなたへの思いは不変です。これからは法学部の専任として学部で民法のゼミや講義でリトル・ユスティティアの養成に専念します。
 

 関東学院大学ロースクールは横浜の外れに位置する小さなロースクールでしたが、歴代の加藤院長、松原院長、そして現在の河村院長と村田専攻主任の下で、横浜弁護士会(現・神奈川県弁護士会)の弁護士教員の先生方、研究者教員の先生方、事務の皆さん、そして何よりもあなたに憧れて正義の女神たらんとして必死に努力する学生諸君と力を合わせて日々教育に打ち込み、日本で最も難関といわれる新司法試験にリトル・ユスティティアたる合格者を毎年絶えることなく輩出し続けることができたのは僕の誇りとするところです。今後は教え子の彼・彼女らが日の当たらない社会の片隅で真面目に暮らしているのに報われることが少なく、いつも割を食ってしまい砂を噛む思いで涙にくれている人たちの心に寄り添って光を与え、その権利を救済し笑顔を取り戻してあげてあなたの伝説を広めてくれることでしょう。僕と同じように叶わぬ恋かも知れないのにユスティティアに恋をして、関東学院大学ロースクールで、合格が何ら保証されない精神的に非常に厳しい状況にもかかわらずリトル・ユスティティアたらんと果敢にも日夜勉学に真剣に打ち込んできたすべての元関東学院大学ロースクール生に対して、心から敬意と感謝を表して僕の近況報告の手紙を終えることにします。 
 

不一  志村 武 拝

                                                               
 PS 僕が初めてあなたのことを聞いたのは、名講義との誉れが高い刑法学者で当時学長の西原春夫先生の「刑法総論」の授業に潜りで出席した大学1年の時でした。また、あなたは目隠しをしているが目隠しを外した時のその美貌の素顔は、閻魔さまのような怒った怖い顔でも、咲き誇る満開の桜のような笑顔でもなく、厳しい風雪に耐えて内側に激しい正義への燃えたぎる炎を漲らせつつも静かな佇まいの厳かな無表情ともいうべき仏像のお顔に違いないという彼のエッセイを読んだことを思い出します。さらに、以前、家族法学者で成年後見法学の先駆者の野田愛子先生に六法の扉に「クールな眼と熱き心を」とサインしていただいたこと、奇しくもロースクールの岡本教授の授業参観の折に、岡本教授が野田先生と同様に法曹としての理想は“Cool head, ,warm heart”であると言われ、人の痛みが分かる優しいマラソン解説者の増田明美さんが好きだと話されていたこと、その直後にテレビで彼女がある選手の座右の銘を「疾風に勁草を知る」と紹介していたのを聞き、「受かれば天国、落ちれば地獄」ともいうべきロースクールの勉学の厳しさとそれゆえに際立つあなた、正義の女神ユスティティアの厳かなまばゆいばかりの美しさにも似た司法試験合格者の華やかさに思いを致して胸を打たれたことなども、今、走馬燈のようにとても懐かしく次から次へと浮かんできます。
 
 なおつい最近、2022年にはさらに広く社会を構成する市民の方々にあなたについて知っていただくために、関東学院大学法学部が関内キャンパスに移転することになり、僕の研究室も移る予定です。僕はこれからもあなたの伝説を少しでも広めることができるように関東学院大学ロースクールや法学部の教え子のリトル・ユスティティア達とともに精進していきたいと思いますので、お見捨てなく、あちらにも明治初期からのうなぎの老舗もあることですし、是非関内新キャンパスにも足をお運び下さい。最後にあなたの存在がいつも僕を高めてくれていることに心から感謝を込めて拙い詩を贈ります。
 
 
 ユスティティアを思い、関東学院大学ロースクール閉院にあたり詠める
 

星( し)空に  んの良し悪し 問()うてみる
 

海( み)の彼方の 日()本布教の

 

な尊 凜( ん)としおわす 伽藍( らん)にて
 

唐( う)の御佛 麗( るわ)しき哉

 

志村 武人

〔『関東学院大学 法科大学院の軌跡』(2019年3月30日)30頁-32頁より転載〕

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