教員紹介

法学部教員コラム vol.1

2012.08.27 法学科 鳥澤 円

政府がなくても法はある?

この度、法学部では、法学部教員の研究生活の一端や、大学人として
折にふれて感じたことを、コラムとして順次紹介していくことになりました!
これをきっかけとして法学部に少しでも興味を持っていただければ幸いです!

 

 

2012-8-24 掲載
No.1 【政府がなくても法はある?】

執筆者:法学部 准教授 鳥澤円(法哲学・法思想史)

 

 

私たちが産まれたとき、そこにはすでに国家があり法がありました。多くの人は、政府と法は不可分である、つまりセットになっているものだと考えています。しかし、法は政府がなければ存在しえないものでしょうか?これは国際社会を考えるときに避けて通れない問題ですが、ここではより本質的に、国家間の社会ではなく個人が構成する社会を考えてみましょう。
アナーキー(本来は「政府がない」という意味で、かならずしも「無秩序」を意味しません)において法は存在しうるか?存在しうるとして、どのような形態をとるか?それは理想的か、それとも破壊的か?といった議論は、社会哲学で(細々と?)行われてきました。でも、難しい研究書はちょっと…という人は、ハインライン著『月は無慈悲な夜の女王』(ハヤカワ文庫)を手にとってみてください。SFの古典として評価の高い小説ですが、その魅力の1つは、社会思想の思考実験としても楽しめるところにあります。

 

 

あらすじは、地球社会に従属させられていた月社会が協力と工夫の末独立する…という、アメリカ独立戦争をほうふつとさせるもの。登場人物も魅力的ですが、社会科学的に興味深いのは、ストーリーの合間に描写される月社会の諸制度です。月には中央集権的な政府がなく、政府機関としての裁判所もありません。しかし民間の(!)職業裁判官はいますし、そもそも月での裁判は仲裁――両当事者の付託に基づく裁定――が基本なので、誰でも裁判官になれます。小説では、少年グループと地球からの観光客との路上での争いに遭遇した主人公が、頼まれて裁判官を引き受け、その場で裁判を行い、解決する様子が描かれています。また、月には強行法規としての家族法がないので、主人公は多夫多妻結婚(!)をしています。

 

 

このような思考実験は、法や司法制度の本質を考えるよいきっかけになります。興味をもった人は、ぜひ勉強の合間に読んでみてください。

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